正しい名義変更手続きで未来にも安心を
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相続や生前贈与、離婚時の財産分与、不動産取引の際には不動産の名義変更手続きを避けて通れません。期限や罰則がないとしても、然るべき手続きをせずに放置した場合には時間が経ってから不利益やトラブルの元になる可能性があるからです。それぞれのケースにおいてどのような手続きが必要か、どのような流れで行うかといった基礎的な情報を丁寧にご紹介しております。
親族から不動産を買い取るときなどに、登記をしないと何年も経ってから相続が発生したときに、相続人から売買について異議が出ることもあり、せっかく代金を払ったのに名義変更ができないという事態になりかねません。このように登記をしないでいることの不利益は何十年も経ってから紛争になることもあります。これに対して、登記手続きすると自己の権利を公的に証明できることから、紛争予防の役割を果たしています。不動産の名義などが関係することは、必ず登記手続きを依頼するなどで行なってください。
固定資産評価額によって課税金額を算定
①登録免許税
登記によって、登録免許税が課税されます。軽減措置がある場合も含め、固定資産評価額の1000分の1から1000分の20まで相続、売買など登記の原因によって異なります。
②不動産取得税
売買、贈与の場合には課税されます。新規に所有権を取得した場合に課税されるので、相続によって承継した場合や共有物分割、共有不動産の持分を相手方に贈与や売買で名義変更する場合や、実体上、共有物分割となる離婚時の財産分与の場合は課税されません。
自宅の土地、建物を贈与する場合、建物も贈与することで建物の床面積の2倍までの土地面積分については不動産取得税が免除されます。
路線価によって課税金額を算定
土地の贈与税、相続税について課税されるか計算するには、国税庁が毎年度、出している路線価図で算定します。詳細は下記の通りです。
贈与税の基礎知識
贈与税の基礎控除額
一般贈与
一人の方が1年間に基礎控除額の110万円を超えて贈与される場合、贈与税がかかります。贈与を受ける方に2名の方から各110万円の贈与を受ける場合、110万円分について贈与税がかかります。
基礎控除の例外
①相続の開始前3年以内の贈与については、110万円以内の贈与についても相続税での計算の対象となるため、仮に子供さんやお孫さん5人に3年間、100万円贈与していて亡くなられた場合、1500万円が相続財産に組み入れとなりますので、特に注意が必要です。
②相続の開始3年前からの贈与に限らず、毎年100万円を何年も贈与されていた場合、総額が一括贈与の対象金額とみなされる恐れがあります。こうなると総額に対して贈与税がかかりますので、かなり高額な税金の支払いをしなければならなくなります。特に定期預金などから、毎年一部解約するなどして100万円や110万円など定額贈与をされていた場合、確実に一括贈与とみなされます。
そこで高額の支払いなどがあれば、税務署に誤解を招かないためにも領収証などを保管しておくけば、相続税の対象から控除できるので書類の保管も重要です。
特例贈与
両親や祖父母など直系尊属から1月1日時点で20歳以上の子供や孫に300万円以上贈与する場合、贈与税の累進税率が軽減されています。
不動産の贈与額の計算方法
不動産を贈与する場合、上記の通り土地と建物で贈与税額の計算が異なります。
相続時精算課税制度
1月1日の時点で60歳以上の両親、祖父母から20歳以上の子供や孫に贈与する場合、翌年の贈与税の申告時期に精算課税制度の適用を受ける申告をした場合に限り、2500万円までは贈与税を課税せず、相続の時に贈与財産も合算したうえで、相続税の計算をします。2500万円を超えて贈与する場合、20%の贈与税を支払う必要があります。
また、この制度を一度利用すると、その後、110万円までの暦年贈与の適用を受けることができませんのでご注意ください。不動産を贈与する場合は、上の路線価等での金額で計算します。
この制度ができたときは、相続税の改正前であったため、通常、7000万円などの控除があったことで贈与財産を加算しても相続税がかからないことで、制度を使って贈与する意味がありましたが、改正後の現在では相続の紛争予防などの意味が薄れてしまいました。
財産分与の登記の注意点
財産分与で不動産を渡すことがよくありますが、離婚届の前の日付で登記してしまうと分与を受けた方に贈与税がかかってしまいます。
これは、離婚公正証書などに司法書士が関与するケースで考えると、公正証書の手続きが終了しそのまま司法書士が登記申請に行き、当事者の一方が市役所に離婚届けに行った場合に起こりえます。
離婚届けを提出したことだけを司法書士が聞き登記申請をしてしまったようなとき、一方から不受理の届け出が出ていた場合に不受理の取り下げが提出されないと離婚届けが正式に受理されません。この場合、その日中に不受理の取り下げの提出がされないと後日の離婚ということになってしまいます。登記の取り下げをするにも双方から委任状をもらわなければなりませんので、充分注意する必要があります。
不動産の財産分与による名義変更
司法書士三宅総合事務所では、離婚問題にも取り組んでいるため、協議離婚が成立した後に、名義変更だけの手続きでご依頼を受けることがあり、公正証書による離婚も含めると、毎年数件の財産分与による不動産の所有権の移転登記のご依頼を受けています。その中で、まれにあるのが配偶者に渡すくらいならば、子供に渡したい(贈与)とのご相談です。60歳以上の方からであれば相続時精算課税制度を利用できるので、贈与税を回避できますが、いずれも年齢基準をクリアしていませんでした。贈与税の問題をご説明して、配偶者に財産分与による登記にしました。
不動産競売と任意売却
任意売却で解決がついた事例で、当初は不動産競売手続きが取られていたた方から自己破産のご依頼を受けました。抵当権者にも一部損害金をカットしていただき、他のクレジット会社など債権者にも何とか元金から1割カットを取り付けて、任意売却で完済できました。
このケースでは、不動産にも駐車場のスペースがないことや土地の形状にも難があり、不動産仲介業者ともハードな交渉を行いました。売却の目途が立つかどうか問題が多かったことで、債権者にも協力を取り付けることができ自己破産せずに解決できました。